2022年2月1日、福音館書店は、おかげさまで創立70周年を迎えました。
70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、各編集長のエッセイをお届けしていきたいと思います。
第1回は、赤ちゃん向けの「こどものとも0.1.2.」と2~4才向けの「こどものとも年少版」を刊行している「こどものとも第二編集部」です。
子どもと大人の間に温かな時間が生まれる絵本を
こどものとも第二編集部編集長
一戸盟子
皆さん、こんにちは。こどものとも第二編集部の一戸です。
20数年前、初めて子どもを産んだころ、私はオロオロしていました。私の母親が赤ん坊を抱っこするとすぐ泣き止むのに、私が抱っこしても泣き止みません。
元々子ども好きだったので、子どもは私にすぐ慣れるだろうと思っていたのに、「母親失格!?」と涙が出そうでした。
もちろん、その後子どもは段々に私にも慣れ、抱っこで泣き止むようにもなりましたが、赤ん坊の世話をしていると一日はあっという間に過ぎます。自分の時間はまったくなく、自分らしさが消えていくようで、赤ん坊は可愛いのだけど、どこか不安と焦燥を抱えていた日々でした。
そうやって半年ほどたったころでしょうか、0.1.2.えほん『こんにちは どうぶつたち』を子どもに読んでやったところ、じっと見て、笑ったのです!
「こんにちは かぴばら」「こんにちは ぞう」……こんなシンプルな言葉に笑うのです。
びっくりすると同時に、私が読むことで子どもが反応を返してくれる、そのことに胸が熱くなり、初めて子どもと心が通じ、子どもとコミュニケーションが取れた思いで、うれしさでいっぱいになりました。
子育てにちょっぴり自信がつきました。
ところで、こどものとも第二編集部では、赤ちゃん向けの「こどものとも0.1.2.」と、2歳~4歳向けの「こどものとも年少版」の2つの月刊絵本を作っております。
「こどものとも0.1.2.」は、赤ちゃんと大人をつなぐ絵本です。
「0.1.2.」を通して、私のような経験をおそらくほかの親御さんもしているのだろうなと思いながら、作っております。初めて絵本を読んでもらう赤ちゃんにふさわしい「言葉」と「絵」を大切に考え、赤ちゃんの感性を豊かにする様々なテーマの絵本を毎月出しています。
「こどものとも年少版」の対象年齢は年少さんぐらいの子どもたち。興味の範囲がぐんと広がる時期です。
心も体も大きく成長する時期に合わせて、やさしいお話、動物や乗り物の絵本、食べ物が出てくる絵本、ユーモラスな絵本など、バラエティに富んだ絵本を用意しています。
私たち編集部では、会議では真剣に議論を交わし(ケンカではありませんよ!)、日々様々な話をしながら、子どもに真に喜んでもらえる作品が揃うよう、がんばっております。
どちらの月刊絵本も子どもに喜びをもたらし、子どもと大人の間に温かな時間が生まれる、そういう絵本です。
これからも温かく応援していただけるとうれしいです。
▼私のお薦め・好きな1冊。
『まじょのかんづめ』 佐々木マキ作
子どもたちが大好きだった絵本です。
魔女の魔法でかんづめに閉じ込められた動物たちを女の子が助けてあげますが、ちょうどそこに魔女が帰ってきます。
女の子が逃げようとしたとき、魔女が「ひひひ、もう、おそい!」と言うのです。
この「ひひひ、もう、おそい!」の言葉を読むと、子どもたちは大喜び。身震いするほど喜んでいました。
最後、魔女はやっつけられ、ハッピーエンドになるとわかっているからこそ、この魔女の登場がわくわく最高潮に面白かったのでしょう。
ページをめくると同時に、子どもたちは私と声を合わせ「ひひひ、もう、おそい!」と叫んでいました。
思い出深い、とても面白い絵本です。