作者


小原嘉明 文/石森愛彦

内容紹介


モンシロチョウはオスとメスをどうやって見わけているか知っていますか? 

答えは翅の色。

しかもそれは人間には見えない紫外色なのです。

さらに調べると、日本と違い、ヨーロッパのモンシロチョウの翅には紫外色がないことがわかってきました。

いったいなぜ? 

身近なモンシロチョウの翅に隠された進化の謎に迫ります。

担当編集者 より


「モンシロチョウはメスの翅だけに紫外色がふくまれている。モンシロチョウのオスは交尾相手のメスをその色で見わけている」。

ここまでのことは子ども向けの昆虫図鑑にも出ていますし、インターネットで検索をすれば容易に知ることができます。もともとこれを解き明かしたのが、本作の著者、小原嘉明氏でした。

しかし、小原氏の研究はそこで終わっていません。

さらに調べていくと、モンシロチョウが最初に現れたヨーロッパでは、モンシロチョウのメスの翅には紫外色がないことがわかったのです。

では、イギリスのオスはどうやってメスを見わけるのか、ヨーロッパから日本へどのようにしてモンシロチョウはやってきたのか、そもそもなぜメスの翅に紫外色がふくまれるようになったのか、本作ではモンシロチョウの翅に隠された謎を解き明かしていきます。

さらに、本作はモンシロチョウの翅にまつわる未解明の謎で締めくくられています。

それは、モンシロチョウの名前の由来にもなってる黒い斑紋です。斑紋のないモンシロチョウがいたり、2つのものがいたり、斑紋の個体差が大きいのです。

どうしてこうなっているのか。

小原氏はそれが「中立進化」したものではないかと書いています。もしそれを証明することができれば、世界的な大発見になるとも言います。40年以上、昆虫を研究してきた小原氏ならではの言葉です。

身近な昆虫でも、わかっていないことがたくさんあります。子どもたちに未知なるものへの好奇心を持ち続けてほしいとの思いから、これからの進化生物学で重要な概念になっていくであろう「中立進化」を盛り込みました。

絵を担当したのは石森愛彦氏です。小原氏とのコンビでの絵本は、『暗闇の釣り師 グローワーム』(たくさんのふしぎ2015年1月号)につづき2作目です。

石森氏は、大の虫好きです。小原さんのテキストをそのまま絵にするだけではなく、テキストには書かれていない研究のこぼれ話や、モンシロチョウ観察のポイントなども盛り込んで、子どもたちが親しみ安い作品に仕上げてくださいました。

作者情報


小原嘉明(おばらよしあき)


1942年、福島県生まれ。1964年東京農工大学農学部卒業。1985年同大教授。現在同大名誉教授。理学博士。1997~2005年にイギリスケンブリッジ大でM.Majerus 教授と共同研究。それを基に、モンシロチョウのヨーロッパ進化説を提唱。著書:「進化を飛躍させる新しい主役」(岩波ジュニア新書)、「モンシロチョウ」(中公新書)、「入門! 進化生物学」(中公新書)など多数。「たくさんのふしぎ」では、『アオムシの歩く道』(通巻336号)、『暗闇の釣り師グローワーム』(通巻358号)がある。

石森愛彦(いしもりよしひこ)


1958年、東京都生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。画家・イラストレーター。猫と虫と音楽が大好き。著書に『うちの近所のいきものたち』『昆虫って、どんなの?』(ハッピーオウル社)、絵を担当したものに『かなへび』(福音館書店)、『素数ゼミのなぞ』(文藝春秋)、『ちいさないきものずかん』シリーズ(童心社)などがある。「たくさんのふしぎ」では、『木? それとも草? 竹は竹』(通巻307号)、『クラゲは花』(通巻319号)、『暗闇の釣り師グローワーム』(通巻358号)がある。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2020年06月01日
通巻:たくさんのふしぎ 423号