作者


堀内孝 文・写真/牧野伊三夫

内容紹介


宮城県石巻市の北上川河口に広がるヨシ原。

そこは鳥や虫など多くの生物を育くんできました。

魚介類が豊富にとれ、ヨシが茅葺きの材料になるなど、人の生活にとってもかけがえのない場所です。

しかし、10年前、東日本大震災による津波でヨシ原は大きな被害をうけます。

震災をはさみ、20年以上にわたる撮影をもとに、ヨシ原の自然と文化を紹介する絵本です。

担当編集者 より


2021年3月で、東日本大震災から10年になります。

たくさんのふしぎの読者である10歳の子どもたちの多くが生まれる前のことになりました。

あの震災で大きな被害を受けた場所を大切にしてきた人たちがいること、そして津波を受けても復活する自然の力強さを、子どもたちに知ってもらいたいとの思いから本作を企画しました。

ヨシが茅葺きの材料になり、豊富な魚介類の獲れるヨシ原は、地元の人に大切にされてきた場所です。

春のヨシ焼き、冬のヨシ刈り、人が手を入れることでヨシ原は維持されてきました。

震災のすぐ後から、地元の人や各地のボランティアが集まり、ヨシ原を復活させるための、瓦礫撤去作業がはじまったほどです。

また、海の水と川の水がまざる汽水域は、ヨシが生育しやすい環境です。

外敵から身を守りやすいヨシ原は、鳥や昆虫など多様な生きものを育んできました。

ヨシ原は人と自然の調和によって成り立ってきた特別な場所なのです。

堀内孝さんはこのヨシ原を撮影して20年以上になります。

本作に掲載されている写真は、震災の前と後でヨシ原がどのように変化したかをとらえた貴重な記録でもあります。

これほど長い間撮影し続けるほど、堀内さんのヨシ原によせる強い思いを、全国の子どもたちにも感じ取ってもらえればうれしいです。

作者情報


堀内孝(ほりうちたかし)


1963年宮城県生まれ。写真家。1990年からアフリカのマダガスカル島を訪れ、貴重な動植物や人びとの暮らしを撮影。1996年からは、中国、東南アジアを訪れ、少数民族の暮らしや手仕事の取材を続ける。主な著書は『青い海をかけるカヌー マダガスカルのヴェズのくらし』(たくさんのふしぎ通巻408号)、『マダガスカルのバオバブ』(たくさんふしぎ通巻357号)、『マダガスカルへ写真を撮りに行く』(港の人)など。宮城県多賀城市在住

牧野伊三夫(まきのいさお)


1964年福岡県北九州市生まれ。多摩美術大学卒業。画家。美術同人誌「四月と十月」同人。HBギャラリー(東京都)などでの個展で作品を発表。著書に『僕は、太陽をのむ』(港の人)、『かぼちゃを塩で煮る』(幻冬舎)、『画家のむだ歩き』(中央公論新社)、『牧野伊三夫イラストレーションの仕事と体験記1987‐2019』(誠文堂新光社)『アトリエ雑記』(本の雑誌社)など。東京都在住。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2021年03月01日
通巻:たくさんのふしぎ 432号