「堀内誠一 絵本の世界」(復刊6冊セット)刊行記念


いつも絵本を子どもたちに届けてくださり、ありがとうございます。

「絵本作りの現場から」では、みなさんのお手元に届いている絵本がどのようにして作られているのかを、作者や編集者の声でご紹介します。絵本完成に至るまでのさまざまなエピソードをどうぞご覧ください。

こどものともひろば 運営係


 『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』など、長年子どもたちに愛される絵本作品を数多く描いた堀内誠一さん。じつは、「アンアン」「ポパイ」「オリーブ」といった一世を風靡した雑誌のアートディレクションを手掛けるなど、デザイナーとしても多方面で活躍をされていました。

 1987年に他界されましたが、ご存命なら今年2022年で90歳。そんな堀内誠一さんの生誕90年の節目を記念して、人気がありながらしばらく刊行されていなかった絵本や、「こどものとも」の記念碑的な作品を6冊同時に復刊します。

 物語に合わせて多彩な表現を用いる一方でユーモアやいたずら心にあふれた堀内さんの絵本からは、子どもたちのために絵本を描くのが楽しくて仕方がない、そんな思いがあふれているように感じます。復刊する6冊を順にご紹介しますので、どうぞこの機会にご覧になってみてください。


●こぶたのまーち

むらやまけいこ 作/ほりうちせいいち 絵

 子ぶたの「るー」はラッパの上手な父さんの指導で毎日ラッパのけいこをしていますが、うまく吹けないので、いやでたまりません。ある日るーは、父さんのラッパが鳴らなくなればいいと思って、大きなラッパにもぐりこみますが……。

 「こどものとも」1969年6月号として刊行した、いまから53年も前の作品ですが、洒落た絵本で全然古さを感じさせません。 
 「るー」がお父さんのラッパで吹き飛ばされてテレビ局の前に落ちるところからストーリーは急展開し、「るー」はテレビと観客の前でラッパを吹くことになってしまいますがはたして……。

 村山桂子さんのシンプルでけれんみのないストーリーと堀内さんの楽しい絵が融合した楽しい作品です。

●てんのくぎをうちにいった はりっこ

かんざわとしこ 作/ほりうちせいいち 絵

 天の丸天井を支えている釘がゆるんで、天が落ちてくる! 誰かが釘を打ちに行かなくては。そこで名乗り出たのは、ひいひいじいさまの形見のハンマーをさずかった小さなはりねずみのはりっこでした……。

 ハンマーを片手に大蛇と戦い、天に上るハシゴを上るはりっこ。大冒険の果てに天の釘を打ちつけて世界を救うことができるでしょうか……。

 文を書いたのは、『くまのこウーフ』でおなじみの神沢利子さん。『ちびっこカムのぼうけん』『銀のほのおの国』などのファンタジー冒険物語も数多く書かれている神沢さんらしい壮大な物語に、堀内さんは太く荒々しい線で動物たちを描き、英雄的な活躍をするはりっこをスピード感たっぷりに表現しています。

●てがみのえほん

堀内誠一 作・絵

 表紙を見ると大きな封筒になっています。「こどものとも」200号(1972年11月号)を記念して、古今東西の子どもの本の登場人物からお祝いのお手紙が届くという作品です。

 『オズの魔法使い』の北の魔女グリンダ、『3びきのやぎのがらがらどん』でおなじみのトロール、絵本のはじまりと言える『もじゃもじゃペーター』から、はては月面のロボットまで、次々とお祝いの手紙が届きます……。

 そして、最終ページでは、ぐりとぐらやだるまちゃん、ぐるんぱたちが集まって、お祝いのカステラを食べています! 子どもたちは、次々と届くお祝いの手紙に心をワクワクさせて、最後のカステラで嬉しい気持ちになることでしょう。
 作品に合わせて絵を描く堀内さんらしく、ページをめくるごとに全く違った絵で見るものを楽しませる絵本です。

●きこりとおおかみ

フランス民話 山口智子 再話/堀内誠一 画

 ある冬、オオカミは食べ物をさがしてきこりの家に忍びこんだものの、熱いスープをかけられて、頭を大やけどして逃げていきました。 

 1年後、きこりが森で木を切っていると頭のはげたオオカミが群れをつれてやってきました。きこりは木に登って逃げますが、オオカミは1ぴきずつ肩の上に乗って、迫ってきます。そこで、きこりは……。

 悪いおおかみを懲らしめるフランスの昔話です。きこりがおおかみに食べられてしまうのではないかとハラハラドキドキ、最後は胸のすく思いを味わえます。
 堀内さんの荒々しい線による描写が、強い躍動感を感じさせ、痛快ながらも迫力のある作品です。

●ふくろにいれられた おとこのこ

フランス民話 山口智子 再話/堀内誠一 画

 ピトシャン・ピトショがイチジクの木に登っていると、袋をかついだオニがやってきて、袋に入れられてしまいます。今夜のごちそうにされては大変と、ピトシャン・ピトショはハサミを使って袋から逃げ出し、オニの家に先回りして帰ってきたオニと対峙します。

 知恵を働かせてオニをこらしめ、最後にオニは焼けた鉄の棒が刺さって死んでしまいますが、滑稽な表現で残酷さを微塵も感じさせないのも、昔話の本質に精通している堀内さんならでは。

 明るく痛快なフランス民話らしく、堀内さんは青い海と空が広がり白壁の家々が立ち並ぶカラフルなタッチで描いています。痛快な楽しい絵本で、子どもたちに大人気まちがいなしの絵本です。

●どうぶつしんぶん

岸田衿子 松竹いね子 谷川俊太郎 文/堀内誠一 絵

 表紙を見ると、動物たちが「新聞」をのぞいています。
 じつは、この本の中には春・夏・秋・冬の4枚の“子どものための新聞”が入っています。

 新聞1枚が「こどものとも」8ページ分あり、まるで人間のように暮らす動物たちの世界で巻き起こる数々の事件の記事が載っています。次号で事件が進展したり解決したり、料理レシピやお医者さん相談、SF小説の連載もあったり。読むのが楽しくて、あっという間に動物の世界の1年が過ぎていきます。

 雑誌のアートディレクションを手掛けていた堀内さんの構成力やデザインセンスがつまった作品です。良質なファンタジー作品に出合ったときのように、目の前に動物たちの世界が広がります。どうぞ新聞を床に広げて、子どもたちと一緒にお楽しみください。


セット特典-自分で作る豆本シート

「堀内誠一 絵本の世界(復刊6冊セット)」には、自分で作る豆本『長靴をはいた猫』(シャルル・ペロー 原作、堀内誠一・堀内紅子 再話・堀内誠一 絵)が特典としてついています。

作者情報


堀内誠一(ほりうちせいいち)


東京に生まれた。グラフィックデザイナー。カメラ雑誌、ファッション雑誌などの編集美術を多く手がけ、イラストレーターとして絵本、その他の児童書に活躍。絵本に『くろうまブランキー』『くるまはいくつ』『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『ちのはなし』(以上、福音館書店)、童話のさし絵に『人形の家』(岩波書店)『雪わたり』『秘密の花園』(以上、福音館書店)、著書に『ぼくの絵本美術館』(マガジンハウス)、編著書に『絵本の世界・110人のイラストレーター』(福音館書店)などがある。1987年没。

書誌情報


読んであげるなら:3才~5才から
自分で読むなら:―
定価:-(6冊セット定価6,160円(本体5,600円)
ページ数:各28~32ページ
サイズ:27×20cm
初版年月日:2021年12月25日
シリーズ:こどものとも絵本