ぽかぽかと太陽の光が差し込み、新緑が目に鮮やかな季節となりました。

遠足やハイキングにはうってつけですね。

春の遠足を待ち焦がれている子どもたちもたくさんいることでしょう。

さて、遠足が楽しみなのは、どうやら人間だけではないようですよ。

『おばけのえんそく』

　　　　　　　　　　　－さくぴーとたろぽうのおはなし

西平 あかね 作

どんより曇った真っ暗闇の夜（おばけにとってはうってつけの遠足日和です）、おばけの子ども「さくぴー」と「たろぽう」も、おばけ保育園のみんなと一緒に遠足に出かけます。

途中、真っ暗なところでよく取れる「闇シロップ」を集めて、目的地の「うみぼうず浜」へ。浜辺に着くと、お鍋岩にシロップを入れて、おばけ流の「闇鍋」作り。へそもち、毒キノコ、ぼちぼち豆など、それぞれ持ってきたものを入れてみんなで食べます。そのあとは、うみぼうずの子どもたちも一緒になって昆布つなひきで盛り上がり……、

しらじらと水平線が明るくなり始めるころ、踊りながら楽しく保育園へ帰ります。

真夜中の浜辺で「闇鍋」なんて、人間にとってはまるで罰ゲームですが、おばけの子どもたちがみんなで「闇鍋」を作って食べている様子は、ほのぼのとした楽しい遠足の風景そのもの。

この絵本を読んでもらう人間の子どもたちも、おばけたちの仲間入りをして、遠足気分を楽しむことでしょう。

絵本の舞台のモデルは、長崎県。上のページに出ている「眼鏡橋」など、長崎らしい風景も楽しめますよ。

さて、『おばけのえんそく』は、「おばけかぞくのえほん」シリーズ第5作。

人間が寝静まった夜に始まるおばけの暮らしをユーモラス描く、子どもたちに大人気のシリーズです。

保育園に通ったり、おつかいに行ったり、お誕生日のお祝いをしたり……。おばけの姉弟・さくぴーとたろぽうを中心に、おばけたちの愉快な暮らしが描かれます。

１作目の『おばけかぞくのいちにち』では、人間が眠る夜から始まるおばけ家族の一日がほのぼのと描かれ、続く『おばけのコックさん』では、レストラン「おばけてい」で働く個性的な面々が登場！

さくぴーとたろぽうが二人でのおつかいに挑戦する『おばけのおつかい』や、お友だちとの小さな冒険が描かれた『おばけのたんけん』では、子どもたちの心情によりそったお話が展開します。

このシリーズの魅力は、愉快で個性的なおばけたち！

絶妙なリアリティを感じさせるおばけたちの魅力は、お話が生まれた経緯に隠されています。

もともと「おばけかぞく」のお話は、作者の西平あかねさんが自身の子どもたちを喜ばせるためにつくりはじめたもので、登場するおばけたちは、身近な人たちがモデルになっているのだとか！

親しみを感じさせるおばけたちのキャラクターは、こんないきさつとも関係しているのかもしれませんね。

そして2023年5月には、

第６作『おばけの こままわしたいかい』が待望のハードカバーになります。

今回は、１作目の『おばけかぞくのいちにち』に登場した人間のたろうくんが、主人公。

たろうくんは「まつぼっくりおばけ」に出会い、おばけのこままわし大会に飛び入り参加します。こままわしの得意なたろうくんは、おばけたちと競いますが、さあ誰が優勝するでしょう？　すごい速さの稲妻ゴマやぶら下がってまわるコウモリ型コマ、火の輪コマ、貝殻ゴマ、けむりゴマなど、ユニークなおばけたちのこまも必見です。

このシリーズの魅力は、なんといっても、ユニークで怖くないおばけたちの世界を安心して楽しめること。なんだ、おばけも人間と同じだなあと感じながら、おばけ世界のディテールが楽しめます。

こままわしの大好きな人間の子どもたちは、おばけのこままわし大会に参加したいなあと想像を巡らせることでしょう。

ぜひ園でお楽しみください。

※新刊『おばけの こままわしたいかい』を含めたシリーズ６作品がケースに入った「おばけかぞくのえほん6冊セット」も刊行されます。

この機会にぜひお求めください。

作者情報

西平あかね（にしひらあかね）

東京に生まれる。「おばけかぞくのえほん」シリーズに、『おばけかぞくのいちにち』『おばけのおつかい』『おばけのコックさん』『おばけのたんけん』『おばけのえんそく』（こどものとも絵本）『おばけのおんがく』（「こどものとも年中向き」2020年8月号として刊行）がある。ほかの作品に『おさらのこども』（「こどものとも年少版」2011年9月号）『ぶんかいきょうだい』（アリス館）『おはいんなさい』『かたつむりぼうやとかめばあちゃん』（ともに大日本図書）『けんだましょうぶ』（福音館書店）がある。長崎県在住。

書誌情報

ひとりで遊ぶなら：3才ぐらいから
大人といっしょに遊ぶなら：何才でも
6冊セット定価：6,600円（税込）
ページ数：－
サイズ：20×27cm
初版年月日：2023年5月10日
シリーズ：こどものとも絵本