2003年に「こどものとも年中向き」の一作としてさっそうと登場した『バルバルさん』。たちまち子どもたちの人気ものになりました。

でも、ていねいな絵本作りを心掛け、その後20数年の間に刊行されたシリーズ作品は、第2作『バルバルさん きょうはこどもデー』、第3作『バルバルさんとおさるさん』のみでした。

そしてこの春、「こどものとも」2025年4月号として、通算4作目の『バルバルさん もりへいく』が刊行されます。

刊行を記念して、これまでのシリーズ作品を振り返りながら「バルバルさん」の人気の秘密に迫ります!


第1作『バルバルさん』

乾 栄里子 文/西村敏雄 絵

バルバルさんは、町の床屋さん。毎日楽しく働いていますが、ある日、ライオンが、たてがみをきれいにしてほしいとやってきます。次にワニが毛をはやしてほしいと、ヒツジがプードルみたいにしてほしいと、次々に動物のお客さんがやってきました。初めはびっくりしていたバルバルさんも、だんだん楽しくなって注文にこたえていきます。夕方、店を閉めようとすると、看板にいたずら書きが……。


第2作『バルバルさん きょうは こどもデー』

乾 栄里子 文/西村敏雄 絵

バルバルさんのところに人間や動物の子どもたちがやってくるお話です。男の子とロバをおそろいの髪型にしてくれたり、5匹の子羊たちそれぞれにピッタリのカットをしてくれたり…。バルバルさんは、いつでも誰がきても丁寧に対応してくれます。正体不明の動物までやってきますが、きれいにさっぱりカットしてもらうと……、さて誰だったのでしょうね。


第3作『バルバルさんとおさるさん』

乾 栄里子 文/西村敏雄 絵

ある日、バルバルさんの床屋におさるがやってきて、手伝ってくれるようになりました。おさるがあまりに熱心なので、バルバルさんは毎日丁寧に仕事を教えます。練習にとバルバルさん自らカットモデルになるのですが、おさるは緊張して切りすぎてしまいます。でも、バルバルさんはあたたかく受け入れてくれます。そして、その髪型が街じゅうに大流行。おおらかなバルバルさんとけなげなおさるさんのやりとりが楽しい絵本です。


いかがでしょうか?

これまでの3作品に通じる「バルバルさん」のひととなりについて、少しお伝えしたいと思います。

●誇りをもって、勤勉に仕事をする職人魂

仕事には常にまじめ。実直に仕事をしながら、お客さんに喜んでいただくことを自分の喜びとしている職人魂にあふれています。

●どんなことがあっても動じない

突然動物がお客でやってきても、無理難題を突き付けられてもまったく動じずに、機転を利かせながら、ていねいに対応していきます。

●ユーモアがあっておおらか

子どもたちが喜ぶ楽しい髪型をあみだすユーモアと、おさるさんが失敗してもそれを責めたりしないで逆に励ましてあげるおおらかさを持ち合わせています。

このように、バルバルさんは、子どもたちにとって理想の大人であり、あこがれの存在といえると思います。そんな愛すべきバルバルさんと、相棒になったおさるさんの絵本の最新刊、第4作『バルバルさんもりへいく』が刊行されます。

今回は、バルバルさんの床屋さんになかなか来ることのできない動物たちのために、バルバルさんとおさるさんが森に出張床屋にでかけるお話。

バルバルさんは足の悪いアルパカのおばあさんのために、おさるさんといっしょに森へでかけていきます。カットしてもらったおばあさんは大喜び! 曲がった腰もピンと伸びてしまうほどです。

それを見ていたバイソンやうさぎの親子もカットしてもらいたくなるのですが、困ったことも起きてしまいます。でも、おさるさんの機転で全部解決! バルバルさんとおさるさんの息のあった仕事ぶりが楽しい作品になっています。

お話しができたきっかけについて、作者の乾さんは次のように述べています。

「以前テレビで、震災の避難所へ出張してお仕事をされている床屋さんのニュースを見ました。のびた髪を切ってもらったり、顔を剃ってもらったり、さっぱりときれいにしてもらって大人も子どももとても嬉しそうにしていたのが印象に残りました。床屋さんに行けなくて困っている人がいたら、バルバルさんとおさるさんはきっと出かけて行ってふたりで力を合わせて楽しく仕事をするだろうと思ったのが、このお話の始まりです。」  

その言葉の通り、バルバルさんとおさるさんが森の動物たちの髪を切って、みんなを元気にしていきます。

ぜひ園でお楽しみください。

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作者情報

乾 栄里子(いぬいえりこ)


東京都に生まれる。東京造形大学デザイン科卒業後、インドへ留学。バナスタリ大学でテキスタイルを学ぶ。絵本は「バルバルさん」シリーズに『バルバルさん』『バルバルさん きょうはこどもデー』『バルバルさんとおさるさん』(以上、福音館書店)、そのほかの絵本に『ふくろうのダルトリー』(ブロンズ新社)『ぽんこちゃん ポン!』(偕成社)『つられたらたべちゃうぞおばけ』(童心社)『ちびうそくん』(PHP研究所)『おわんわん』(ひさかたチャイルド)などがある。東京都在住。

西村敏雄(にしむらとしお)


1964年、愛知県に生まれる。東京造形大学デザイン科卒業。インテリアとテキスタイルのデザイナーとして活動後、絵本の創作を始める。主な絵本に「バルバルさん」シリーズほか、『もりのおふろ』『どうぶつサーカスはじまるよ』『さかさことばでうんどうかい<新版>』(以上、福音館書店)、『どろぼう だっそう だいさくせん!』(偕成社)『ライオンのすてきないえ』(Gakken)、『うんこ!』『わたしはあかねこ』(ともに、文溪堂)、『ふくろうのダルトリー』(ブロンズ新社)『くまくまパン』(あかね書房)『アントンせんせい』(講談社)などがある。第3回 MOE絵本屋さん大賞 、第1回リブロ絵本大賞、他受賞多数。東京都在住。

書誌情報


読んでもらうなら:3才ぐらいから
自分で読むなら:小学校初級から
定価:460円(税込)
ページ数:32ページ
サイズ:27×20cm
初版年月日:2025年4月1日
シリーズ:こどものとも絵本