作者


稲田務

内容紹介


ナナフシは枝そっくりに擬態する虫。

動かず枝のふりをして、身を守ります。

その生態はとてもユニーク。

卵を産む時はお腹を振って遠くに投げ飛ばします。

卵は丈夫で、親ナナフシが鳥に食べられても、お腹の卵は消化されずにフンとともに出てきます。

そしてその卵からも、折り畳んでいた体をのばして幼虫が誕生するのです。

知られざるナナフシの生き様に迫る絵本。

担当編集者 より


ナナフシは、じっとしていると枝そっくりな虫。

昼間は枝に擬態して静かに過ごし、身の危険を感じると、地面に落ちるなどして敵から身を守ります。

この絵本では、「ナナフシモドキ」という種名のナナフシの生態を描きます。

「モドキ」とつきますが、最もよくみられるナナフシのひとつです。(現在は「ナナフシ」という種名は存在せず、「ナナフシ」という呼称は通称としてのみ用いられます。)

ナナフシモドキには、特有の生存戦略があります。

そのひとつが、卵。小さいけれど、硬くて丈夫で、蓋がついています。

メスは卵を産む時、お腹を振り上げるようにして、遠くに卵を飛ばします。

こうすることで、できるだけ広い範囲に子孫を残そうとするのです。

そして、もしメスが、お腹に卵がある状態で鳥に食べられても、その卵は鳥のフンとともに無傷で排出され、孵化することがあると、最新の研究でわかりました。

ナナフシは飛ぶための羽がないため、長距離移動ができません。

しかし、こうして鳥の力を借りて卵を遠くへ運んでもらうことで、色々な所に子孫を残せているのではと考えられています。(この絵本は、上記の研究論文を発表した、神戸大学の末次健司氏に監修して頂いています。)

春になると、わずか数ミリの卵から、小さく折り畳んだ体をのばして幼虫が誕生します。卵の蓋を押し開けて外に出てくる場面は、圧巻です。

著者の稲田務さんは、自然や昆虫を描くベテランの画家。

この絵本を描くにあたり、ナナフシモドキを実際に飼育・観察してひと夏を過ごしました。

ナナフシが飼育箱から脱走するなど、ハプニングもありましたが、無事に産卵し、産んだ卵も丁寧にスケッチして絵本作りに活かしました。

所々にあるナナフシの探し絵も楽しく、実際に外に出てナナフシを探してみたくなる作品です。

精緻な絵で描く、ナナフシのユニークな生態をお楽しみください。

作者情報


稲田務(いなだつとむ)


1949年、兵庫県生まれ。山形県の庄内地方で、身近な自然を題材に絵を描いている。絵本に『なつやすみ虫ずかん』(宮武頼夫・文/かがくのとも絵本)『ぼくのわたしのたからもの』(『かがくのとも』1987年8月号)『ふゆの おくりもの』(同2006年1月号)『とくべつな よる』(岡島秀治・文/「ちいさなかがくのとも」2009年8月号)『てんとうむし みつけた』(岡島秀治・文/同2013年6月号)などがある。

書誌情報


読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:―
定価:440円(税込)
ページ数:28ページ
サイズ:25×23cm
初版年月日:2021年09月01日
通巻:かがくのとも 630号