作者


田中美穂 文/平澤朋子

内容紹介


コケというと、道路脇なんかにある、ただの緑のかたまりだと思っているかもしれません。

しかし、近づいてルーペを使ってよく観察すると、色も形も違い、いろんな種類のコケがあることに驚かされます。

濁流に負けず、日照りにも負けず、がんこに、能天気に、そしてしたたかに生きる小さな植物、コケの世界にご案内します。

担当編集者 より


東京の巣鴨にある小社のそばに大きな庭園があります。

庭園をかこむレンガ塀には、「ギンゴケ」が生えています。

なんとこのコケ、同じ種が南極にも生えているのです。

ギンゴケは近づいて見ると、その名の通り葉先が銀色に輝いて見える美しいコケです。

どうしてそんなに環境の違うところで生きていくことができるのか? 

私たちのそばになにげなく生えているのに、よく見たり、よく知ったりすると、私たちの想像をこえるようなおもしろい生き方をしているのが、本作で紹介するコケなのです。

文章を担当した田中美穂さんは、岡山県倉敷市で蟲文庫という古本屋をされています。

そして、身近に生えているコケの観察を趣味にし、大人向けにコケ観察の入り口になるようなエッセイや本を執筆されてきました。

本作では、「コケはどうやって見つけるのか?」「どうしてコケは枯れないのか?」「コケはどんなふうに成長するのか?」といった基本的なことから、「コケをどうやって見わけるのか?」「コケはどんな特殊な環境で生きているのか?」そして「コケの進化」といった深く掘り下げたことまで、子どもたちに向けて、身近にあるコケの魅力を美しい文章で綴られています。

絵を担当したのは、児童文学や物語絵本の挿絵で活躍されている平澤朋子さん。東京や倉敷での取材を重ね、コケのかたちのおもしろさ、色彩の美しさを描ききってくださいました。

登場するコケは日本の街中で見られる普通の種類のものがほとんどです。

コケは1年を通して観察できるものも多くあります。

本作を読んだら、ルーペをもって出かけてみませんか? 

特別な場所でなくてかまいません。

近所の公園でも、家を出てすぐの道路脇でも、絵本に出てくるのと同じようなコケが見つかるはずです。

そして、コケを拡大して見てみると、「1時間に1メートル」しか進めなくなるというコケ観察の魅力を実感して頂けるはずです。

作者情報


田中美穂(たなかみほ)


1972年岡山県倉敷市生まれ。同市内の古本屋「蟲文庫」店主。著書に『苔とあるく』『亀のひみつ』『星とくらす』(以上、WAVE出版)『ときめくコケ図鑑』(山と溪谷社)『わたしの小さな古本屋』(ちくま文庫)、共著に『本の虫の本』(創元社)、編著に『胞子文学名作選』(港の人)がある。

平澤朋子(ひらさわともこ)


東京都生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、フリーのイラストレーターとして活動。児童書の装画、挿し絵の仕事に『緑の模様画』(福音館書店)『わたしのしゅうぜん横町』(ゴブリン書房)『わたしちゃん』(小峰書店)「名探偵カッレ」シリーズ(岩波書店)『しずかな魔女』(岩崎書店)『森の歌が聞こえる』(光村図書出版)などがある。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2021年10月01日
通巻:たくさんのふしぎ 439号