作者


荒川薫 文/荒川暢

内容紹介


冬のあぜ道を、おばあちゃんと一緒に歩いていくと……あれ、向こうの田んぼで、雪のかたまりが動いた!?

近づいてみると、それは雪のように真っ白で、大きな鳥たち。

あ、こっちを向いた! あれは「はくちょう」っていうんだよ。

そう聞いた女の子は、はじめて見るその姿に目を輝かせます。

優雅でダイナミックな白鳥たちとの出会いを描いた絵本です。

編集担当者 より


 毎年11月ごろになると、白鳥たちは遠くシベリアから3、000キロもの距離を越えて日本へと渡ってきます。まだ幼い若鳥を連れた、命がけの旅路です。
 今回の作品は、そんな長旅の果てに、越冬地へとたどり着いた白鳥たちの姿を描いています。
 田んぼのえさ場で日中を過ごし、夕方になると、水辺のねぐらへと一斉に戻る白鳥たち。雪のように白い体にほんのりと夕陽の赤を映して、優雅に大空を舞うその姿は、まさに息をのむ美しさです。
 2020年2月14日、新潟県での取材当日。夕方になると強い海風が吹きはじめ、立っているのがやっとの悪天候に。水面へと降り立とうとする白鳥たちも、風に煽られバランスを崩しては、再び空へと舞い戻っていきます。そして何度目かの挑戦の末、ついに着水! 担当編集者も思わず「やった!」とつぶやきました。
 今回、読者である“ちいさなひと”の想像力が自然とふくらむように、選び抜かれた言葉で文章を綴ってくださったのは、荒川薫さん。そして夕空を舞う白鳥の姿を、大胆な構図と色彩でドラマティックに描いてくださったのは、薫さんのご子息である荒川暢さんです。
 冷え込みの厳しい冬の新潟で4年にわたり取材を重ね、お二人の息がさらにぴったりと合わさったことで、「冬のはじめて」を描く、新しい白鳥の絵本が生まれました。
 この絵本に出会った子どもたちが、白鳥の生きる世界へと、想像の翼を大きく羽ばたかせてくれたら嬉しく思います。

作者情報


荒川薫(あらかわかおる)


東京生まれ。学習院大学文学部卒。出版社に4年間勤務の後、「母の友」などに童話を発表。「こどものとも」に『あしたてんきになあれ』(1992年11月号)、「こどものとも0.1.2.」に『すずめ ちゅん』(2009年9月号)『とっとこ うれしいな』(2017年3月号)、「こどものとも年少版」に『とん ころころころ』(2012年2月号)などがある。現在、全国で絵本やわらべうたについての講演を行なっている。神奈川県在住。

荒川暢(あらかわみつる)


1966年、東京都生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科でリトグラフを学ぶ。1994年から1996年にかけて文化庁派遣芸術家海外研修員として渡米。絵本に『クモと糸』(「たくさんのふしぎ」)、『なみとび』『かに かにの すなだんご』『すなはまの あな』『うみのなかが みえるよ』(「ちいさなかがくのとも」/以上、福音館書店)などがある。東京都在住。

書誌情報


読んであげるなら:3才から
自分で読むなら:―
定価:440円(税込)
ページ数:24ページ
サイズ:23×20cm
初版年月日:2021年12月01日
通巻:ちいさなかがくのとも237号