福音館書店 創立70周年 記念「東京子ども図書館 共同企画 復刊セット」


いつも絵本を子どもたちに届けてくださり、ありがとうございます。

このたび、福音館書店の創立70周年記念出版として、公営財団法人東京子ども図書館と復刊セットを共同企画いたしました。

東京子ども図書館は、子どもの本と読書を専門とする私立の図書館です。

「石井桃子のかつら文庫」「土屋滋子のふたつの土屋児童文庫」「松岡享子の松の実文庫」を母体として1974年に設立されました。

子どもたちへの読書環境の提供とともに、子どもと本の世界で働くおとなのために、資料室の運営、出版、講演・講座の開催、人材育成など、さまざまな活動を行っています。

このセットは、東京子ども図書館が2017年から3年間にわたり実施した復刊リクエストキャンペーン「いま、この本をふたたび子どもの手に!」によせられた読者の声にお応えしたものです。

文庫や図書館で多くの子どもたちに楽しまれてきた8冊の絵本を、新たな読者との出会いを願って再びお届けいたします。

こどものともひろば 運営係


「東京子ども図書館 共同企画 復刊セット」(全8冊)


内容のご紹介


『おばけのジョージー』

ロバート・ブライト 作・絵/光吉夏弥 訳
初版年月日:1978/6/20

本作品は、1944年に著者の子どものために書かれたストーリーで、今では全世界の子どもたちに愛されています。

ホイッティカーさんの家に住むジョージーは、毎晩ドアをギーと鳴らし、階段をミシリと言わせ、みんなに時間を知らせていました。

ある日、ホイティカーさんが蝶つがいに油をさしてしまったため、みんな時間が分からず困ったことになってしまいました。そして、役割がなくなったジョージーは家を出てさまよい歩き、牛小屋に暮らすことに。でも、またホイッティカーさんの家のドアと階段が古びると、ふくろうに呼ばれて家に帰ってきて、再びドアと階段を鳴らすお化けの日常が戻ってきます。

いつの時代も夜の闇は子どもにとって怖いものです。物音がすると、何かがいると想像してしまいます。

そんなとき想像したお化けがジョージーだったら、子どもはきっと安心して寝ることでしょう。

油をさすと音がしなくなるという生活体験にもとづいた展開が、子どもを物語の世界にぐっと引き込むポイントです。


『ママ、ママ、おなかがいたいよ』

レミイ・シャーリップ 文・絵/バートン・サプリー 文/つぼいいくみ 訳
初版年月日:1981/11/30

お腹が痛いと病院に担ぎ込まれた男の子。

お医者さんがお腹の中から取り出すと、青りんごにボール、誕生日ケーキに、次から次へ飛び出してきて、ママはびっくり!!

海外の影絵遊びの定番演目を、切り絵を使って表現されています。

本作品は、自分の子どもに繰り返し読まされた思い出の一作です。男の子のお腹の中から、次々と出てくるものに子どもが目を丸くして驚いていました。

もともとの遊びの演目があるためか、セリフ回しが軽快で、読んでるほうもワクワクしてきます。

子どもたちも、たくさん食べすぎてお腹が痛くなる経験もありますし、お腹から出てくるものも家にあるものばかりなので、出てくるもの出てくるもの楽しくて、最後に自転車が出てきたときには大盛り上がりです。

「だれか わたしのぼうし みなかった?」という最後の言葉が、これからまた始まる騒動を予感させて読後感もばっちりです。


『ちいさなたいこ』

松岡享子 作/秋野不矩 絵
初版年月日:2011/2/10

2022年1月25日に惜しまれつつ亡くなられた松岡享子さんが文章を書かれています。

松岡享子さんは東京子ども図書館の創設者の一人であり、『とこちゃんはどこ?』などの絵本や「くまのパディントン」「うさこちゃん」シリーズなど翻訳などがあります。

東京こども図書館の前身の1つである「松の実文庫」で長く活動をされていましたが、実は「語り」の名手として知られていて、本作品も「昔話」のような耳で聞いてると心地よくなる楽しい作品となっています。

お百姓さんの老夫婦が収穫したカボチャの中から祭囃子の音がしました。

カボチャの穴からのぞきこんでみると、中では小さな人たちがお祭りを楽しんでいます。ある日、太鼓が破れてしまって、お囃子が止まってしまいました。老夫婦は小さい太鼓を作り上げると、お箸でつまんで、小さなひとたちにプレゼントしました。老夫婦はお礼にもらったお団子を食べると、体が小さくなってカボチャの中へ。老夫婦はカボチャの中でいつまでも幸せにくらしました。

秋野不矩さんが描く桃源郷のような小さなひとたち祭囃子の世界もふくめて、不思議な余韻が残る作品です。


『へそもち』

渡辺茂男 作/赤羽末吉 絵
初版年月日:1980/7/31

『しょうぼうじどうしゃじぷた』をはじめ様々な絵本・童話を書き、そして翻訳者としても『エルマーのぼうけん』をはじめ多くの絵本・童話を翻訳した、児童文学作家・渡辺茂男さん

そして、齢50才で絵本デビューして『だいくとおにろく』『かさじぞう』『ももたろう』など日本を代表する昔話絵本作家として、日本人では初となる国際アンデルセン賞画家賞を受賞した赤羽末吉さん

二人の夢の共演となった作品です。

カミナリは雷を鳴らし雨を降らすだけではなく、牛やおへそを取るため地面を行ったりきたり悪さをしていました。

お寺の和尚さんが、五重塔のてっぺんに槍を避雷針のようにくっつけると、なんとカミナリが引っかかります。

和尚さんがカミナリに悪さをしないように諭します。カミナリはおへそを食べて雨を降らしていたのです。

和尚さんは、おへその代わりにお餅(へそもち)をあげました。そして、カミナリを凧に乗せてお空にかえしてあげました。

渡辺茂男さんは、もともとはエッフェル塔をイメージして本作品を書かれたそうです。

赤羽末吉さんは、カミナリが空と地面を行ったりきたりすることを表現するために、掛け軸のような縦開きの絵本としました。


『きんいろのしか』

ジャラール・アーメド 案/石井桃子 再話/秋野不矩 画
初版年月日:1968/12/15

南の国に、なによりも金の大好きな王さまがいました。

ある日、けらいをつれて森に狩りにでかけた王さまは、金色に輝くシカを見つけます。シカが舞うと、足跡が金の砂に変わってあたりに飛び散るのです。シカをつかまえようとする王さま、逃げる金色のシカ。牛追いの少年ホセンは、シカが逃げるのを助けますが王さまに捕らえられ、三日のうちに金色のシカを連れてこないとおまえの命はないと脅されてしまいます。はたして、ホセンと金色のシカの運命は……。

バングラデシュの昔話を、「うさこちゃん」「ピーターラビット」「くまのプーさん」などの翻訳などで知られる石井桃子さんが再話し、日本画家の秋野不矩さんが描いた絵本。

日本からは遠く離れた国のお話ですが、秋野不矩さんの絵は異国情緒もたっぷり。

各場面の様子を伝える絵が実に美しく、何度も繰り返し眺めたくなります。

少し長いお話ですが、ダイナミックなお話と絵の力で子どもたちをひきつけて離さない絵本です。


『かまきりのちょん』

得田之久 作・絵
初版年月日:1973/8/10

かまきりのちょんは、朝起きるとまず脚や触覚をなめはじめます。

朝のお化粧が終わると、獲物を狙って奮闘しますが、テントウムシに逃げられたり、アリの群れの中に落っこちたり。アリに襲われる前になんとか逃げ出したちょんは、ようやく大きな獲物を捕まえることに成功。お腹いっぱい食べます……。

草むらでのカマキリの生活を描いた絵本です。

描いたのは、数々の昆虫絵本を描いている得田之久さん

背景の描写を省き、登場する昆虫や植物をすこしデフォルメして描いている絵は、リアルなのにユーモラスな雰囲気もたたえていて、身近な昆虫への得田之久さんの深い愛情が感じられます。

なによりシンプルなので、小さな子どもにも情景がすぐに伝わります。

失敗を繰り返してもくじけないちょんの姿がとてもけなげで愛らしく、子どもたちはちょんの気持ちに寄り添って、絵本の世界に入り込み楽しむこと請け合いです!


『よるのびょういん』

谷川俊太郎 作/長野重一 写真
初版年月日:1985/2/15

夜中に腹痛で高熱を出したゆたかは、救急車で病院に運ばれます。

当直のお医者さんがゆたかを診察した結果は「虫垂炎」。いわゆる“盲腸”です。お母さんはあわてて夜勤中のお父さんに連絡を取ります。お医者さんと看護士さんはすぐに手術の用意を始めます。ゆたかは手術台にのせられ、そして……。

緊急手術をテーマに、夜の病院で働く人たちの姿をモノクロームの写真で描きます。

本当に病院で起きている出来事をカメラで追いかけているようですが、実は、ゆたかもお父さんやお母さんも俳優さんが演じているというから驚き。

作者の谷川さんによれば、子どもたちが眠っている間にも、たくさんのおとなが起きて働いていることを伝えたいとの思いが、この絵本の生まれるきっかけだそうです。

暗くて不安な夜の病院を舞台に、さまざまに働く人たちの姿を臨場感あふれるスリリングな写真で表現した、類を見ない絵本です。

読んでもらう子どもたちは、かたずを飲んで先の展開を見守ることでしょう。


『クリスマスのうさぎさん』

ウィル、ニコラス 作・絵/わたなべしげお 訳
初版年月日:1985/9/30

明日はクリスマス。

待ちきれず散歩に出たデービーは、動物の足跡をたどって森の中に入ってゆきます。するとそこに一ぴきのキツネが脚をワナに挟まれて動けなくなっていました。デービーがワナを外してあげると、キツネはデービーを森のパーティに誘います。会場にはいろいろな動物たちが集まっていて、やがてそこに、プレゼントを山のように積んだそりに乗って、サンタクロースがやってきます。動物たちは順番にプレゼントをもらい、デービーも「こうさぎが一ぴき欲しい」とサンタクロースに言います。すると……。

およそ70年ほどまえにアメリカで出版された絵本ですが、まったく古めかしさを感じさせない洗練された絵本です。

森の緑、サンタクロースや動物たちの赤や黄色の色調の中で、青いフード付きのコートを身にまとったデービーの姿が愛らしく印象的。

絵を担当しているニコラス・モードヴィノフさんが、クリスマスイヴの夢のようなできごとを幻想的に描いています。

次の日の朝、ベッドの中で目を覚まして、すべて夢だと思っていたデービーには思いがけないうれしい出会いが……。読んでもらう子どもたちも幸せな気持ちに包まれるエンディングです。

1985年に翻訳出版され、長らく品切れとなっていましたが、このたび初めての復刊が実現しました。

書誌情報(セット)


読んであげるなら:―
自分で読むなら:―
定価:8冊セット定価9,680円(本体8,800円)
ページ数:―
サイズ:24×29cm
初版年月日:2022年4月5日
シリーズ:―