作者


五味太郎

内容紹介


男の子が、不思議なことに気づきます。

それは、「自分の本当の姿は、自分では見えない」ということ。

自分の顔や背中を、鏡やビデオを通さずに直接見ることはできないのです。

どうしても見てみたくて仕方ない男の子に、話を聞いていた女の子が言葉を掛けます。

人間の存在をめぐる古代からの哲学的なテーマに、五味太郎ならではの視点で楽しく向き合った絵本。

担当編集者 より


「自分の本当の顔は、自分では見えない」
古代より哲学者や芸術家を魅了してきたこのテーマについて、作者はもう何十年も考えてきて、いつか作品にしたいと思っていたそうです。「自分が見えない」、それは一番身近な哲学的問題かもしれません。そこから、「自分とは何か?」という問いも湧いてきます。

作者自身が抱いてきたという「自分を見たい」願望は、絵本の中で、男の子を通して描かれます。それを聞いた女の子は、男の子に言葉を掛けます。他者である女の子の物の見方によって、男の子の視野は少し広がります。そして、なぜ自分を見たいと思うんだろう? という最後の問いに、作者は温かく、示唆に満ちた答えを用意します。

小さな子は、自分が世界の中心で、そこから他者との関わりを模索していきます。この絵本を読んだ子は、自分に関する新鮮な視点を得て、自分に客観的な意識を向けたり、他者について考え始めたりするかもしれません。本書は、読み手に広く開かれており、様々な思索を促してくれます。そして、自分や他者についての新しい発見や、考え続けるためのヒントを与えてくれることでしょう。読んだ後、自分はどう感じたか、自分は自分を見てみたいか、などを自由に話し合うのも楽しい、「哲学の入り口」となる絵本です。

作者情報


五味太郎(ごみたろう)


1945年生まれ。工業デザイナーを経て絵本の世界へ。著作は450冊を超える。サンケイ児童出版文化賞、ボローニャ国際絵本原画展などで数多くの賞を受賞。「かがくのとも」に『ぼくはぞうだ』(1976年2月号)、『うみのむこうは』1976年12月号、『ことば』(1978年9月号)、『わたしとわたし』(2018年1月号)、『すてきなボタン・シャツ』(2020年5月号)。「かがくのとも絵本」に『みんなうんち』『からだのみなさん』『にているね!?』『どこまでゆくの?』がある。

書誌情報


読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:―
定価:440円(税込)
ページ数:28ページ
サイズ:25×23cm
初版年月日:2022年10月01日
通巻:かがくのとも 643号