作者


平坂寛 文/キッチンミノル 写真/長嶋祐成

内容紹介


深海魚は、脂がのっておいしいものが多いことを知っていますか。

有名なのは、キンメダイやノドグロ、アンコウ。あまり知られていませんが、深海にすむツノザメの仲間やクロシビカマスなどもおいしい魚です。

深海魚の味がよいのには理由があります。

よく観察すると、味や色や形に、深海魚ならではの生き方があらわれているのです。

そんな深海魚の秘密にせまる本です。

担当編集者 より


 深海魚を食べたことがありますか?と聞くと、なかなかぴんとこないかもしれません。でも、きっと食べています。

かの有名な高級魚ノドグロやキンメダイ、アンコウ、身近な魚ではマダラも深海魚です。

深海魚には脂がのっていて味のよいものがたくさんいますが、ちゃんとした理由があります。

浅いところにすむ魚は「うきぶくろ」という空気のつまった風船のような器官を体内にもつことで、沈んでしまうことなく、自由に海のなかを泳ぎ回ることができます。

しかし、深海魚のすむ水深200メートルをこえる海の中では、途轍もない水圧がかかって、うきぶくろの中の空気が押しつぶされてしいます。

そこで、深海魚のなかには、うきぶくろのかわりに水より軽い脂を筋肉にたくわることで、深い海を泳ぎまわることができるように進化したものがいました。それが、深海魚に脂がのっている理由です。

そんなふうに、深海魚を食べてみると、彼らのくらしぶりを舌で感じることができるのです。

さらに、料理をするときに、深海魚の形や体のなかをよく観察すると、深海魚のくらしぶりが見えてきます。

ノドグロの名前の由来にもなっているノドのなかがべっとりと黒いのも、深海魚ならでは理由があります。また、胸ビレや尾ビレのかたちにも、深海に適応した彼らのくらしぶりがあらわれています。 

この本では、お店で売っている深海魚以外にも、いろんな深海魚が登場します。

東京湾で釣った深海ザメの一種ヘラツノザメは、お刺身にして肝といっしょに食べます。この肝が脂がのっていておいしいのですが、そこにも厳しい深海の環境に適応した彼らの秘密が隠されています。

東京湾や石垣島で釣ったいろんな深海魚を釣って料理して、彼らの生き方を紹介します。

ライターであり、深海魚の研究者でもある平坂寛さんは、深海魚への愛があふれる文章を書いてくださいました。

そして、しゃしん絵本作家のキッチンミノルさんの躍動感のある釣り現場の写真や、おいしそうな料理の写真。

魚や水棲生物を専門に描く画家、長嶋祐成さんの美しい深海魚たちの絵。

3人の個性が合わさり、これまで読んだことのないような切り口の深海魚の本ができました。

作者情報


平坂寛(ひらさかひろし)


1985年長崎県生まれ。生物専門のライターとして世界各地で捕獲した生物の記事を多数執筆。(財)黒潮生物研究所客員研究員として深海魚の研究も行う。著書に『喰ったらヤバいいきもの』(主婦と生活社)『深海魚のレシピ: 釣って、拾って、食ってみた』(地人書館)など。「情熱大陸」などテレビへの出演も。

キッチンミノル(きっちんみのる)


テキサス州フォートワース生まれ。しゃしん絵本作家。18歳の時に噺家を目指すも挫折。その後、法政大学に入学し、カメラ部に入部。卒業後は不動産販売会社に就職。写真家・杵島隆に写真を褒められ、その気になって脱サラした。身の回りにある面白い事象を多くの人と共有するべく、日々しゃしん絵本の構想を練っている。好物はさつまいも。

長嶋祐成(ながしまゆうせい)


1983年大阪府生まれ。魚や水棲生物を専門に描く画家。大学では思想を専攻し、卒業後は服飾分野でクリエイティブを学ぶ。デザイン会社でディレクターを務めた後、画家として独立。著書に『きりみ』『THE FISH 魚と出会う図鑑』(ともに河出書房新社)。定期的な個展の他、水族館・博物館の館内イラストや書籍の挿画等を手がけている。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2021年07月01日
通巻:たくさんのふしぎ 436号