作者
舘野鴻 文・絵
内容紹介
美しい姿をしたオオセンチコガネという虫がいます。
この虫の大好物は、うんこ。成虫は動物のうんこを食べ、うんこの玉を地中に作って幼虫を育てることが知られています。
しかし、土のなかでの幼虫の生態は謎につつまれてきました。
絵本作家の舘野鴻さんが、知恵と根性と体力で、オオセンチコガネのくらしの解明に挑みます。
担当編集者 より
取材をはじめる前、オオセンチコガネについての論文や報告などあらゆる文献を探しました。
オオセンチコガネは地域によって色の違う美麗な昆虫として有名ですので、色彩の変移に関する文献は多く見つかりました。しかし、土の中のくらしは断片的な情報しかなく、卵から羽化までの記録は見つかりませんでした。
文字通り、オオセンチコガネの土の中での生態は謎に包まれていました。
そして、4年前。まったくの手探りから取材をはじめました。観察装置の設置や堀りあげ、野外での観察には、担当者も同行し、舘野さんのご苦労にすぐそばで見てきました。
こうではないかと仮説を立てて実験しても失敗することが何度もありました。答えは誰も知りませんので、オオセンチコガネの実験や観察で自分たちが見ているものが、彼らの生態の本来の姿なのか、たまたまそうなっているのか、1度見ただけで確かなことはわかりません。
ひとつ結果が出たら、同じ条件やすこし条件を変えながら、検証を繰り返しました。オオセンチコガネが活発に活動するのは、春と秋でした。もし春の観察に失敗すると、次の秋まで待たなければなりません。
時間はあっという間にすぎていきました。もしかして永遠にオオセンチコガネの生態など解明できず、本も出来ないのでは・・・と不安におそわれたこともありました。
しかし、実験や観察で、オオセンチコガネの生態が垣間見えた瞬間は何ものにも代えがたい喜びがありました。歓喜と落胆を繰り返しながら、本作に描いたオオセンチコガネの生態にようやくたどり着くことができました。
現代のファーブル昆虫記のような、舘野さんが描くオオセンチコガネの観察記を楽しんで頂ければ幸いです。
作者情報
舘野鴻(たてのひろし)
1968年横浜市に生まれる。故・熊田千佳慕に師事。演劇、現代美術、音楽活動を経て生物調査員となり、国内の野生生物全般に触れる。その傍ら教科書、図鑑などの生物画や景観図、解剖図などを手がけ、写真家久保秀一の助言を得て2005年より絵本製作を始める。生物画の仕事は『生き物のくらし』(学研プラス)など。絵本に『しでむし』『つちはんみょう』『がろあむし』(以上、偕成社)、『なつの はやしの いいにおい』『はっぱのうえに』(ともに「ちいさなかがくのとも」/福音館書店)などがある。
書誌情報
読んであげるなら | :― |
自分で読むなら | :小学中学年から |
定価 | :770円(税込) |
ページ数 | :40ページ |
サイズ | :25×20cm |
初版年月日 | :2022年6月01日 |
通巻 | :たくさんのふしぎ 447号 |