2022年2月1日、福音館書店は、おかげさまで創立70周年を迎えました。

70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、各編集長のエッセイをお届けしていきたいと思います。

第3回は、3~5才向けの科学絵本「ちいさなかがくのとも」を刊行している「ちいさなかがくのとも編集部」です。


「好き!」に囲まれる幸せ

ちいさなかがくのとも編集部編集長

山北美由紀


娘が幼い頃、保育園からの帰り道が親子の大切な時間でした。

大人が歩けば数分の距離ですが、花を見ては摘み、チョウに出会っては追いかけ、ドングリを見つけては拾い、水たまりがあれば飛びこみ

……いやあ、家路の遠いこと! 

幼い子どもたちは、見て、触って、やってみることが大好き! 

「ちいさなかがくのとも」は、そんな好奇心いっぱいの子どもたちに贈る“初めて出会う科学絵本”です。

4歳を中心とした3~5歳の子どもたちが、絵本を読んでもらった後に、「自分もそれを見てみたい!」「やってみたい!」と感じてくれるような絵本を目指しています。

絵本作りの過程では幼稚園や保育園にお邪魔することもあります。

すると子どもたちは、きまって自分の宝物を見せてくれます。ダンゴムシに会える秘密の場所を教えてくれる子がいれば、缶いっぱいのドングリを見せてくれる子も。

幼い子どもたちは、本当にまっすぐに自分の「好き!」と向き合うんだなあと感動します。好きなものをとことん見て、集めて、五感で味わって、周りの大人と喜びを共有して……そうやって自分の生きる世界を毎日確かめていくのだなあ、と。

「ちいさなかがくのとも」はそんな子どもたちに向けて、「ここにもすてきなものがあるよ」と呼びかける絵本です。

幼い子の目の先にどんな「面白い!」があるのかを知るために、作家の方たちとともにしゃがんで子どもの目の高さで取材を行い、数年かけて一番いいところだけをぎゅうっと絞ったものを子どもたちにお届けします。

絵本のテーマは生き物、植物、虫、乗り物、自然、体、水や砂、光や音など多岐にわたりますが、子どもに身近なものばかり。

絵本を通じて身の回りに1つ1つ「これ、好き!」が増えていったら……「好き!」に囲まれたその子の毎日も、そばにいる大人の毎日も、より心ときめくものになると信じています。

「ちいさなかがくのとも」編集部員は4人。

その皆が言うことですが、身近な「面白い!」に目を光らせていると、毎日が発見だらけになります。「会社の前にツクシ発見!」「虹が出てる!」「この穴、何?」など、編集部には嬉しい「!」や「?」がいっぱいです。歩いては、何かを見つけて立ち止まり、また歩いては立ち止まり……なんだか、幼かった娘の歩き方を思い出します。

2022年に創刊20周年を迎えた「ちいさなかがくのとも」から、皆さんの毎日に新しい「好き!」が生まれたら嬉しいです!

▼私のお薦め・好きな1冊。


『まほうのコップ』 藤田千枝 原案/川島敏生 写真/長谷川摂子 文

幼い娘と初めて読んだ科学絵本です。

たねもしかけもありません。

ガラスのコップに水を入れると、コップの後ろに置いたイチゴが、キュウリが、おやおや、ぐんにゃり曲がっちゃう!

――というシンプルな写真絵本ですが、子どもの「やってみたい」をくすぐる力が強いこと、強いこと。

コップと水があればすぐ出来るので、家のコップで即実践。

娘が一番喜んだのは、コップの向こうでゆがんだ私の顔でした。

……そんなにおかしい?