作者


八百板洋子 再話/スズキコージ 絵

内容紹介


ある日、漁師のおじいさんは金の魚をつりあげた。

逃がしてくれれば、お礼にどんな願いでもかなえてくれると、魚は言う。

無欲なおじいさんは礼など要らないと言って魚を逃がすが、それを聞いたおばあさんは「あれがほしい」「これがほしい」と言い出して……。

世界各国に広く伝わる物語を、スズキコージさんの描く異国情緒豊かな絵とともにお楽しみください。

担当編集者 より


「きんのさかな」は世界各国に類話の伝わるお話です。ロシアの国民的詩人、プーシキンの筆によるものが広く知られている他、グリムの昔話集にも「漁師とおかみさん」の題でそっくりなお話が収められています。ヨーロッパから伝播して、インドネシアやプエルトリコにも似たお話があるそうです。

この絵本の元になったのは、八百板洋子さんが採集したマケドニア地域のヴァージョンです。マケドニアは現在のギリシャ、ブルガリア、北マケドニアにまたがる地域で、エーゲ海に面しています。この物語の舞台になっているのも、おそらくはエーゲ海でしょう。青く美しかった海は、金の魚への要求が募るごとにだんだんと荒れてゆき、しまいには黒々と逆巻きます。

絵を描いたスズキコージさんは、この物語について「欲望がエスカレートした現代にこそ意味を持つ話」だと言われました。おばあさんは手に入れたものを最後にすべて失ってしまいますが、その表情は心なしか、コントロールできない欲望から解放されてほっとしているようにも思えます。

作者情報


八百板洋子(やおいたようこ)


1946年、福島県生まれ。ソフィア大学大学院に留学。『ふたつの情念』(新読書社)、『吸血鬼の花よめ』でそれぞれ日本翻訳文化賞、『ソフィアの白いばら』で産経児童出版文化賞、日本エッセイストクラブ賞、『猫魔ヶ岳の妖怪』(以上、福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞、『金の鳥』(BL出版)で日本絵本賞を受賞。

スズキコージ


1948年、静岡県生まれ。1966年に上京し、1968年、新宿歌舞伎町の路上にて初個展。『エンソくん きしゃにのる』(福音館書店)で小学館絵画賞、『やまのディスコ』(架空社)で絵本にっぽん賞、『おばけドライブ』(ビリケン出版)で講談社出版文化賞、『ブラッキンダー』(イースト・プレス)で日本絵本賞大賞を受賞。兵庫県在住。

書誌情報


読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:―
定価:440円(税込)
ページ数:32ページ
サイズ:26×19cm
初版年月日:2023年08月01日
通巻:こどものとも 809号