作者


村上リコ 文/THORES柴本

内容紹介


1851年、ロンドンで世界で最初の万博が開かれました。

その会場となったのは、鉄とガラスでできた建物、通称「水晶宮(クリスタル・パレス)」。

設計したのは、貴族の家で働いていた庭師のパクストンです。

建物自体が展示品とも言われた水晶宮は、開催を反対する意見を汲んだものでもありました。

世界初となる万博はどのようなものだったのでしょう?

担当編集者 より


1851年、ロンドンで世界最初の万博が開かれました。この本では、発起人の一人であるヴィクトリア女王の夫・アルバートと、「水晶宮」と呼ばれる会場を設計した庭師のパクストンの二人に焦点をあて、計画から開催までを追いました。
計画は何度も頓挫しそうになりました。現代でも、環境面の悪化・費用や入場料・内容などに反対意見が噴出しますが、当時から同じような状況でした。
特に会場となる公園の巨木を切り倒すことが発表されると、激しい反対キャンペーンが巻き起こります。
しかしパクストンの建築案で、会場に対する反対意見は払拭されました。当時から評価されてきた水晶宮ですが、温室さながらに巨木をそのまま包み込んだパクストンのアイディアは、現代の感覚でも驚かされます。
産業革命まっただ中のこの時代、欧州各国は近代国家を少しずつ形成し、国の力を競い合っているころでした。日本では江戸時代末期に相当します。
当時の出品物には、植民地からのものも多く展示されていました。平和のお祭りとして開催された反面、それぞれの国力を誇るという面もあったのです。一方で、王族や貴族という限られた人たちのものであった科学・芸術を、広い階層に開くきっかけともなりました。
万博のそうした両面、現代につらなる歴史の一幕を、当時の資料をもとに描かれた美しい絵で知っていただけたらと思います。

作者情報


村上リコ(むらかみりこ)


千葉県出身、文筆・翻訳家。東京外国語大学卒業。19世紀から20世紀にかけてのイギリスの日常生活を調べて書くことを専門にしている。主な著書に『図説 英国メイドの日常』『図説 英国執事』(河出書房新社)など。翻訳書にアニー・グレイ、アンドリュー・ハン『ミセス・クロウコムに学ぶ ヴィクトリア朝クッキング』(ホビージャパン)など。『英國戀物語エマ』『黒執事』ほか、アニメやマンガの考証アドバイザーも務める。

THORES柴本(とーれすしばもと)


装画家、イラストレーター、キャラクター&コスチュームデザイナー。雑誌や小説、単行本の装画やイラスト、カヴァー画、挿絵、キャラデザインを手がける。主な挿絵の仕事に「トリニティ・ブラッド」シリーズ、「バチカン奇跡調査官」シリーズ(いずれもKADOKAWA)など多数。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2023年11月01日
通巻:たくさんのふしぎ 464号