作者


菅瀬晶子 文/平澤朋子

内容紹介


イスラエルに住むアラブ人のおばあさん、ウンム・アーザルは、大変な苦労をしながら子育てをしました。

うれしい時もかなしい時も、彼女の力になったのは子どものころにおぼえた料理でした。

文化人類学者の菅瀬晶子さんがウンム・アーザルの家族といっしょに生活して見たことを、パレスチナの食文化をまじえながら描きます。

担当編集者 より


パレスチナ・イスラエルにすむアラブ人の豊かな食文化を紹介したい。そう考えたのが、この本をつくるきっかけでした。「ムジャッダラ」(挽き割り小麦、たまねぎ、レンズ豆を炊いたもの)、「マナイーシュ」(パンの上にチーズやハーブをのせて焼いたもの)、「マハシー」(挽肉とお米を葡萄の葉で巻いたり、茄子につめたりしたもの)「マァカローネ」(アニスシードと金ゴマ入りのクッキー)など、美味しそうな料理をたくさん紹介します。

料理をまじえて描いているのは、日本ではほとんど知ることのできないイスラエルに住むアラブ人のリアルなくらしです。文章を担当したのは、国立民族学博物館でパレスチナ・イスラエルに住むアラブ人キリスト教徒を研究する文化人類学者の菅瀬晶子さんです。本作に登場するウンム・アーザルと菅瀬さんは15年前からの知り合いで、3年以上イスラエルのハイファにあるウンム・アーザルの家に住んで調査をされました。そのときに見たり体験したりしたことのなかで心に残ったこと、料理にまつわることを中心にまとめたのが本作です。

2023年10月からイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの苛烈な侵攻が続いています。パレスチナ・イスラエル地域のアラブ人たちは度重なる紛争を生きてきています。そこには当然、日々のくらしがあります。現在、80歳をこえるウンム・アーザルは大変な苦労を重ねて、子どもや孫を育てました。しかし、ウンム・アーザルの家族の日常のよろこびやたのしみ、かなしみには、私たちも共感することがそこかしこにあります。日本にすむ子どもたちが、パレスチナ・イスラエルに住む人たちと、心のどこかでつながりを感じるきっかけになればうれしいです。

作者情報


菅瀬晶子(すがせあきこ)


1971年、東京都新宿区出身。東京外国語大学を経て、総合研究大学院大学博士後期課程修了。2011年より、国立民族学博物館に所属。1993年以来、パレスチナ・イスラエルに関わりつづけ、おもにキリスト教徒コミュニティの文化や、彼らがイスラーム教徒と共有する聖者崇敬について研究している。著書に『イスラエルのアラブ人キリスト教徒』(渓水社)、『イスラームを知る6 新月の夜も十字架は輝くー中東のキリスト教徒』(山川出版社)などがある。

平澤朋子(ひらさわともこ)


1982年、東京都出身。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。児童書の装画や挿し絵の仕事を中心に活動。絵を担当した作品に『明日をさがす旅』(福音館書店)「名探偵カッレ」シリーズ(岩波書店)『いつかの約束1945』(岩崎書店)『双子の星』(ミキハウス)『オンボロやしきの人形たち』(徳間書店)などがある。「たくさんのふしぎ」ではほかに、『コケのすきまぐらし』(通巻439号/田中美穂・文)の絵を担当している。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:810円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2024年6月01日
通巻:たくさんのふしぎ 471号