作者
田中陵二 文・写真
内容紹介
石が好きな子どもたちは、いつかは自分の手で、新しい石、新鉱物をみつけてみたいと願うものだそうです。
では、どんな人がどんな風に新鉱物をみつけるのか?
石の名前はどんな風につけるのか?
そんな疑問に応える本ができたらと、北海道石発見者・命名者の田中陵二さんが、石との出合いから描く新鉱物の発見譚。
その石は美しく光る、とてもめずらしい石でした。

著者 より
地球の一番表面、地殻で見つかった鉱物はおよそ6000種類あって、毎年100種類ぐらいずつ新しい鉱物が発見されます。6000種類というととても多いように感じますが、例えば植物の種類は30万種あるとされますし、動物だと脊椎動物で140万種、昆虫は110万種いるとされ、それに比べると鉱物の6000種はかなり少ないのです。新しい昆虫の種類を見つけるのに比べ、新しい鉱物を見つけるのは200分の1ぐらいのチャンスしかなく、そう簡単には新鉱物は見つかりません。
新しい鉱物として登録されるには、国際的な学術機関の書類審査を通過する必要があります。この名前は、何百年たってもずっと残るので、間違いのないように、とても審査が厳しいです。具体的には、いままでに知られていない成分からできている鉱物、または今までに知られている成分であっても、はじめて明らかになった原子の配列をしていれば、新鉱物の資格があります。日本では、今までに150種ぐらいの新鉱物が見つかっています。
この本では、わたしが研究チームの仲間とともに、新しい鉱物を見つけて、調べて、名前をつけ、世界に紹介した話をします。その石は、紫外線を当てると黄色や緑色にうつくしく光る、ふしぎな性質をもつ新しい鉱物でした。こんなヘンテコでうつくしい石が、いままで、だれにもその秘密をあかされることなく、北海道の山々にひっそりと眠っていたのです。さらによく調べてみると、この新鉱物「北海道石」は、わたしたち生命をつくりだすために欠かせない元素「炭素」をふくむ、とてもめずらしい石だということがわかりました。
作者情報
田中陵二(たなかりょうじ)
1973年、群馬県生まれ。東海大学理学部化学科客員教授。(公益財団法人)相模中央化学研究所主任研究員。群馬大学大学院工学研究科博士後期課程修了。科学技術振興機構研究員などを経て現職。専門は有機・無機ケイ素化学、結晶学および鉱物学。マクロ科学写真の撮影もおこなう。共著に『よくわかる元素図鑑』(PHP研究所)、『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る』(文一総合出版)、監修に『GEMS 美しき宝石と鉱物の世界』(東京書籍株式会社)などがある。2013年より月刊誌『現代化学』(東京化学同人)にて「結晶美術館」を連載中。たくさんのふしぎは、『石は元素の案内人』(たくさんのふしぎ傑作集)、『いろいろ色のはじまり』(2023年10月号)に続き3作目。
書誌情報
読んであげるなら | :― |
自分で読むなら | :小学中学年から |
定価 | :810円(税込) |
ページ数 | :40ページ |
サイズ | :25×20cm |
初版年月日 | :2024年8月01日 |
通巻 | :たくさんのふしぎ 473号 |