作者


熊谷博人 文・絵

内容紹介


紺色の四角形を組み合わせた東京オリンピックのエンブレムをおぼえていますか? 

そのデザインは江戸時代にできた「市松文様」が元になっています。

たくさんの美しい文様や楽しい文様が、江戸時代に生まれ、現代にもうけつがれています。

どのようにして文様は作られたのでしょう? 

江戸の街にタイムスリップします。

担当編集者 より


 今、社会現象になっている漫画『鬼滅の刃』。

ヒロイン竈門禰豆子の着ているピンク色の着物。どんな柄が入っているかおぼえていますか? 

それは「麻の葉文様」です。

この文様は、植物の麻の成長の早さに重ねて、成長を願い子どもの着物によく使われました。

竈門炭治郎の着ている羽織は、「市松文様」。

江戸時代に人気を博した歌舞伎役者、佐野市松が好んだ文様です。

市松文様は、東京オリンピックのエンブレムのモチーフにもなっています。

そんなふうに現代に受け継がされてきる文様の多くが生まれたのは江戸時代です。特に、江戸の町人たちのくらしの中から文様は作りだされました。

本作では江戸時代の町人の1年のくらしを描きながら、文様がどのように生み出されのか、そして、文様にこめられた意味を紹介しています。

本作の著者、熊谷博人さんは絵本を描くのは始めてです。本職はブックデザイナー。司馬遼太郎の『街道を行く』(全43巻)や『正倉院宝物』(全3巻)など、豪華で美しい装丁を数多く手がけてこられました。

デザインの素材や参考にするため、文様を染めるのに使った型紙や、反物の見本帳を集められてきたそうです。江戸時代の資料も丹念に調べれられるようになり、江戸文様に関する大人向けの本を多数出版されています。

熊谷さんの絵は、はじめて絵本を描かれた方とは思えないほど、生き生きとして、あたたかみにあふれています。

実は、熊谷さんのお父様は、福音館の出版活動の初期に活躍され、『ようちゃんともぐら』や『二ほんのかきのき』を描かれた熊谷元一さんです。熊谷博人さんの絵にはどこかお父様と通じるものを感じます。

また、江戸の街の絵は、浮世絵などの資料を元にし、東京都江戸東京博物館の学芸員さんにチェックをして頂き、当時の風物をできるかぎり正確に再現しています。

本作が刊行される1月は、正月に合わせ、テレビや広告などで和のデザインとして文様を目にすることが多くなる季節です。

子どもにも大人にも、なにげなく見ている文様の奥深さを楽しんで頂ければと考えています。

作者情報


熊谷博人(くまがいひろと)


1941年生まれ。多摩美術大学卒業。出版社に5年間勤務の後、ブックデザイナーとして独立し、画集、写真集、文芸書などの装丁、レイアウトを行う。主な装丁本は、司馬遼太郎著『街道をゆく(全43巻)』『正倉院宝物(全3巻)』など多数。装丁の他に和更紗の調査を行う。著書は『江戸文様こよみ』(朝日新聞出版)、『和更紗江戸デザイン帳』(クレオ)、『日本の文様 染の型紙』(クレオ)など多数。

書誌情報


読んであげるなら:―
自分で読むなら:小学中学年から
定価:770円(税込)
ページ数:40ページ
サイズ:25×20cm
初版年月日:2021年01月01日
通巻:たくさんのふしぎ 430号