作者
野坂勇作 作
内容紹介
うきくさは土に根を張ることなく、水の上に浮かんで生える水草です。
水の上をふわふわと漂いながら生長し仲間を増やしてゆく様子や、水の流れに乗ったり、鳥の体にくっついたりして、別の地に移動してゆく様子、そして冬を越す様子など、田圃を主な繁殖の舞台とするうきくさの生態を、田圃の一年を通して描きました。
編集担当者 より
映画『男はつらいよ』の主人公フーテンの寅さんのイメージと言えば、根無し草、浮き草稼業。
どれもあまりいい意味で使われることのない言葉です。
根を地中に張ることのないことから、地に足が着かない不安定な暮らしや仕事を説明する時に使われています。
この絵本に登場するうきくさは地面に根を張り生長していく植物とは違い、水の上をふわふわと漂いながら増殖し、流れに任せて移動していく少し変わった生態をしています。
この生態を不安定と捉えマイナスのイメージに使っているのはあくまでも人間の勝手な思い込みです。
地に根を張ることにエネルギーを注力しないので、その分素早く増殖し、水の流れに身を任せ移動をして新しい場所での繁栄を容易にする、いわば植物としてのうきくさの戦略なのです。
子孫を残し繁栄していくことが、種としての命題とするならば、このうきくさの戦略は一つの賢い方法だと思います。
うきくさみたいなフーテンの寅さん、周りの人たちはその自由な暮らしぶりに羨望しているところもあります。
フットワーク軽く、どこにでも行ける自由さはあこがれの対象なのでしょう。
根無し草は決してネガティブな言葉ではないのです。
作者情報
野坂勇作(のさかゆうさく)
1953年、島根県松江市生まれ。主な作品に『あしたのてんきは はれ?くもり?あめ?』『しもばしら』『どろだんご』『オレンジいろのディーゼルカー』(「こどものとも年少版」2010年6月号)『あめのひのディーゼルカー』(「同」2012年11月号)『すすめ ろめんでんしゃ』(「同」2017年8月号)『もやし』(「かがくのとも」2018年5月号)等。鳥取県在住。
書誌情報
読んであげるなら | :5・6才から |
自分で読むなら | :― |
定価 | :440円(税込) |
ページ数 | :28ページ |
サイズ | :25×23cm |
初版年月日 | :2020年10月01日 |
通巻 | :かがくのとも 619号 |