はじめに


いつも絵本を子どもたちに届けてくださり、ありがとうございます。

福音館書店は1956年の「こどものとも」創刊以来、65年に渡り月刊絵本を刊行し続けて参りました。
時代は変わり、人と人とのコミュニケーション方法が大きく変わりましたが、絵本の大切さは変わらないと思っています。

今日でも多くの園の先生によって当社の月刊絵本が保育の現場で活用され、子どもたちの育ちに寄り添い、園と家庭とを結んでいるという事実。

毎号毎号を手に取り、子どもたちと一緒に楽しんでくださる多くの先生方がいらっしゃるからこそ、数千にものぼる「新しいお話」を世に出すことができたのだと実感しております。

月刊絵本が保育にどう活かされ、子どもたちはどのように絵本の世界を楽しむのか。

この連載では、月刊絵本を保育に取り込み、子どもたちの変化を日々感じながら園長として保育に関わっている松本崇史先生に、月刊絵本の魅力を紹介いただきます。

それではどうぞ、お楽しみください。

こどものともひろば 運営係

新年度を迎えた子どもたちへの読み聞かせ


新年度を迎え、子どもたちも保育者も新クラス、新担任、新しい友だちとの日々がスタートしていることと思います。

新年度を迎える4月、5月は、「はじめまして」が多いことから、子どもたちも色々な姿を見せてくれます。

3月まであれだけ落ち着いていたのに、泣くことが増えたり、朝の登園を渋る、ちょっといたずらをしてみたりなど、保育者もあの一年は何だったのか?と悩む姿もあります。

ただ、新年度の「はじめまして」の多さを考えれば、大人でも会社内の違う部署に異動したり昇進して立場が変わったりしたら、悩むわけですから子どもたちに変化があるのが当然だとも思えます。

さて、それは絵本の読み聞かせも同じことだと思います。

新しい人間関係、新しい環境の中で、新しい絵本に出会うのです。

ならば、保育者も少し考慮した読み方や選書をしたほうが優しいなと思うのです。

たとえば、選書であれば、下記のような点を考慮すると、絵本を通したコミュニケーションが楽しいものになり、後々の絵本体験が変わってくると感じています。


このようにの双方向のコミュニケーションが生まれやすいものを選ぶと、子どもたちもこの大人との絵本とのやり取りは非常に楽しいなと思えたりします。


ただ、それだけでなく、その年齢相応の物語の絵本なども、その季節にあったものを子どもたちと読みたいものです。

月刊絵本の4月号などは、全年齢、その時期に見合った季節感だったり、出来事だったり、難易度を考慮して作られていますが、やはり前述したような新年度の状況の中では、絵本をじっくり楽しむということが難しい子もいます

そんな時の読み方のコツがあります。下記のような点です。


このような、普段の読み聞かせとは違う手法を用いることが有効な場合もあります。

しかし、総じてそれは、保育者と子どもの関係性を創るためです。

絵本に親しみを持ってもらい、物語の世界に入るには、時間が必要な子もいます。

そして、その入り口は保育者との絆であることが多いのです。

そのための手法は、保育者一人ひとり、また子ども一人ひとりに任されていきます。

ここに列挙した手法は私なりのやり方ですが、どうかきれいな形だけにとらわれず、あくまで子どもたちを中心にしながら、いろいろな読み方を楽しんでみてはいかがでしょうか。

執筆者


松本崇史(まつもとたかし)


社会福祉法人任天会 おおとりの森こども園 園長。

鳴門教育大学名誉教授の佐々木宏子先生に出会い、絵本・保育を学ぶ。自宅蔵書は絵本で約5000冊。

一時、徳島県で絵本屋を行い、現場の方々にお世話になる。その後、社会福祉法人任天会の日野の森こども園にて園長職につく。

現在は、おおとりの森こども園園長。今はとにかく日々、子どもと遊び、保育者と共に悩みながら保育をすることが楽しい。

言いたいことはひとつ。保育って素敵!絵本って素敵!現在、保育雑誌「げんき」にてコラム「保育ってステキ」を連載中。