作者


小風さち 文/しもかわらゆみ

内容紹介


カルガモのお母さんが大事に温めた卵からひながかえりました。

10羽の元気なひなたちは、お母さんと一緒に、向こう岸までおいしい水草を食べにいきます。

ひなたちには「初めて」がいっぱい。

泳ぐのも、コイやカメを見るのも初めて。

そして、こわーいカラスに出会うのも……。

ひなたちは無事に水草にありつけるでしょうか?

編集担当者 より


「学ぶ」という言葉は、「真似る」という言葉と同じ語源だそうで、古くは「まねぶ」とも読まれていたそうです。

そんなことからもわかるように、色々な技能や知恵を習得するための道のりは、まず真似ることから始まります。

それは人間だけではなく、カルガモのヒナも同じです。歩くこと、水に入ること、泳ぐこと、エサをついばむこと、羽繕い……と、母ガモの行動を真似しながら、生きるための術を学んでいきます。

しかも野生の生きものの場合、それは、生まれてすぐに行わなくてはいけません。

真似をしながら学ぶカルガモのヒナたち。そんなテーマの絵本があったらいいな、と思い、『ぼく ごりら』(「ちいさなかがくのとも」2005年1月号)『とうさん ごりら』(同2008年2月号)『ぼくらは ごりら』(同2011年9月号)などで、動物の親子や仲間たちとの関係性を見事に描いてくださった小風さちさんに文章の依頼をしたところから、この企画はスタートしました。

毎年カルガモが繁殖をしている東京都の目白庭園のホームページに「本日、カルガモのヒナ誕生!」というお知らせが掲載されたその日、担当編集はすぐにしもかわらさんにご連絡。緊急取材(!)を敢行することになりました。

千葉県からおっとり刀で駆けつけてくださったしもかわらさんは、「かわいい~」と連呼しながらも、目は真剣。じいっとヒナと母ガモの観察にいそしんでいました。

いくらでも観察を続けられそうでしたが、惜しくも閉園の時間に。

駅までの帰り道をご一緒しているとき、しもかわらさんがポツリと一言、「描けそうです」。

うれしくてうれしくて、その場でつい踊り出したくなってしまったのをよく覚えています(家に帰ってから踊りました)。

作者・小風さちさん より


カルガモのひなが列になってお母さんについていく様子は、近所の園の散歩の行列によく似ています。

好奇心の強いひな、絶対離れないひな、のんびり屋に、ちょっかい出し。ワイワイガヤガヤは人と同じ。

もしかして園の先生方も、このカルガモのお母さんのように数えるのでしょうか。

1、2、3、4……ああよかった、みんないる。

作者情報


小風さち(こかぜさち)


東京都生まれ。長編童話『ゆびぬき小路の秘密』で野間児童文芸新人賞を受賞。絵本に『わにわにのおふろ』をはじめとする“わにわにシリーズ”、『とべ! ちいさいプロペラき』『ぶーぶーぶー』『よ・だ・れ』『あむ』『くるま はこびます』(以上、福音館書店)などがある。「ちいさなかがくのとも」に、『トラ トラ トラクター』(2010年2月号)『ぼくらは ごりら』(2011年9月号)がある。東京都在住。

しもかわらゆみ


東京都生まれ。2001年より講談社フェーマススクールズ(KFS) の通信講座にてイラストレーションを、同講座修了後はKFS直営教室で動物細密画(ワイルドライフアート)を学ぶ。2013年、同スクールが主宰した「第7回KFS絵本グランプリ」にて『ほしをさがしに』でグランプリを受賞。その他の絵本に『おすわり どうぞ』『ねえねえ あのね』(以上、講談社)、『おんなじ だあれ?』(あかね書房)などがある。千葉県在住。

書誌情報


読んであげるなら:3才から
自分で読むなら:―
定価:440円(税込)
ページ数:24ページ
サイズ:23×20cm
初版年月日:2021年04月01日
通巻:ちいさなかがくのとも 229号